マイナス金利政策も金融市場の刺激に疑問
市場の予想通り、ECB(欧州中央銀行)はマイナス金利政策の実施に踏み切った。加えて大規模な量的緩和を行うとし、手始めの規模は4,000億ユーロになると見られる。ECBによる今回の動きには二つの狙いがある。第一に、ユーロ圏経済のデフレ回避。そして第二に、銀行から域内企業への銀行融資の促進だ。過去数年に渡り、欧州経済は債務問題による深刻なダメージを受け、物価も経済下落と共に低水準を推移してきた。昨年から底打ちの兆しを見せているものの、未だ物価上昇が見られず、ユーロ圏のインフレ率は長期にわたり1%未満となっている。事実上、インフレ率1%未満というのはマイナスに陥っている状態と大差ない。大雑把に言ってしまえば、ユーロ圏はすでにデフレに陥っているのだ。
経済がデフレという困難な局面から脱する為に、中央銀行は常々量的金融緩和策を採択してきた。もしこの先もユーロ圏の物価に動きが見られない場合、ECBが更に政策金利を引き下げ、大規模な量的緩和政策を実施する可能性は非常に高い。現在、ユーロ圏の失業率は非常に高い水準が続いており、多くの労働者が職を得られない状況下で物価上昇を試みるは口で言うほど容易ではない。それゆえ、大規模な量的緩和策の実施に加えて、景気刺激対策を打ち出すことも非常に重要となろう。しかし、各国の財政難がネックとなり、現段階で欧州PIIGS5カ国は大規模な雇用対策を行う財源はないに等しい。PIIGS各国の財政状況が好転するまで、デフレ回避の責任は主にECBの役目となろう。
銀行融資を促進するのは、マイナス金利政策の目的の1つであるが、銀行の融資姿勢が必ずしも中央銀行の政策を受けて変化するとは限らない。銀行が融資を行うか否かは景気動向及び借入需要に左右される。もし経済が活発化し借入需要が高まれば、銀行が資金を中央銀行に預けておくことはないだろう。銀行がひたすら資金を中央銀行に預けているのは、ユーロ圏における借入需要が非常に弱々しいことを物語っており、借入需要が増えない限り、マイナス金利政策がもたらす効果は、銀行が準備金の余剰を取り崩すにとどまるであろう。
2014年6月9日
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