ウクライナ問題、ロシア経済にはマイナス
ウクライナ情勢が一段と緊迫しており、ロシアの軍事介入が世界の金融市場にインパクトを与える可能性が懸念される。現在のロシアとウクライナの情勢を見ていると、昨年の米国とシリアの状況が連想される。当時、米国は軍事介入をするべくシリアへ軍を派遣したが、米国内部や世界から批判の声が高まる中、最終的に米国は軍事行動に至らなかった。ここ数日、国際社会は総じてロシアの軍事介入を反対しており、この状況は昨年の米国によるシリアへの軍事介入が反対されていた時と非常に似ている。国際的な圧力を受け、ロシアとウクライナ間で戦争が勃発する可能性は高くない。
当時米国はイラクが大量破壊兵器を保有していることを理由に攻撃したが、この戦争を切っ掛けに、強国が軍事力で弱国との問題を対処するやり方に、世界は大きな反感を抱いた。もしロシアが本当に武力行使に踏み切った場合、世界中から非難を浴びる事になるのは間違い無い。ロシアが各国から制裁を受けて孤立すれば、宿敵である米国がその隙をついてロシアの成長を阻む可能性が高まってしまう。プーチン大統領なら米国に隙を与えるような判断はしないだろう。
政治面での暗雲がたちこめる中、経済面のロシア株は暴落しており、中央銀行も政策金利の引上げでルーブル相場の安定を図っている。この状況からも、今回のウクライナ問題はロシアにとってメリットは無く、デメリットしか見えてこないと言える。相対的に、米国の方がメリットを受ける者となるだろう。ロシア・ウクライナ間の情勢緊迫化は、東欧から米ドル資産への資金の流れを作り、米国ではまさにQE(量的金融緩和策)の縮小期間であり、米国への資金流入はQE縮小が経済に与えるマイナス影響を和らげる一助となる。資金が例えば米国債へ流入することにより、国債利回りを安定した水準で維持できるだろう。ロシア・ルーブルはフラジャイル・ファイブ(脆弱な5通貨)の一つとマーケットでは見なされており、ひとたび大量の資金流出が起これば、ロシア経済は非常に危機的な状況となる。当然、もしもロシア経済が危機に陥った場合、再び世界的な金融危機が勃発する可能性が予想される。
政治であれ経済であれ、ロシアがウクライナへの武力行使に踏み切ればデメリットの方が大きいため、プーチンがいかに事態を収束させるのかが注目される。
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