‘QE/量的緩和’
中国本土の経済情勢が今期マーケットの焦点に
米国の利上げ時期前倒しや、緊張するウクライナ情勢、中国本土経済の不調などの要因が重しとなり、香港の株式市場の第1四半期は盛り上がりが今ひとつとなり、第2四半期に入り、今後中国本土の経済的要因が焦点となってくるであろう。中国本土経済の不調を目の当たりにし、政府による経済刺激対策の可能性に期待を寄せる声も有る。もし現実に経済刺激策が実施されれば、中国・香港の両株式市場は一定の効果があるだろう。一方、中国政府が遅々として対策をとらない場合、失望売りの動きが株式市場に下落の波を再発させるやもしれない。 中国政府が刺激策に踏み切るか否かのほか、中国本土において今後、債務不履行と理財商品が行方が株式マーケットのパフォーマンスを左右する要因となろう。第2四半期の中国では債券や金融商品が償還期限のピークを迎えるため、再び債券や金融商品がデフォルト問題に陥る可能性は大いにある。再び債務不履行に陥る企業が一社でも出現すれば、金融機関が高利回り投資商品「理財商品(WMP)」の償還不履行に陥る可能性が高まり、資金逼迫の悪化を招いて、投資家マインドは否応なしにダメージを受けるであろう。また、昨年6月に中国本土は「流動性逼迫問題」に陥っているため、6月の中間決算期末を迎える前に中国人民銀行(中央銀行)が短期的な金融緩和を実施するか否かも、投資ムードに影響を与えるはずだ。 中国及び香港の株式マーケットにもたらす影響に関しては、中国本土の要因と比べ、周辺国からの要因は比較的軽微と言える。ロシアによるクリミア半島合併はもはや既定事実化するものとなったが、米欧及びロシアの関係性は国益に反し今後、更に悪化することはないと思われ、ウクライナ問題で高まった地政学的リスクは今後沈静化すると見られる。米国QE(量的緩和)縮小の問題を見てみると、FRBは秩序だった債権購入規模の縮小をすでにマーケットの共通認識として定着させることに成功させており、今後そのペースに変更がない限り、米QE撤退という懸念材料はすでにマーケットで消化されたものとなろう。 総じて、もし中国本土が経済刺激策を発表した場合、ハンセン指数は23,000ポイントに挑む可能性が高まる。反対に経済刺激措置が行われない場合、再び流動性逼迫問題に陥り、ハンセン指数は21,100ポイントの水準を試みる可能性がある。マーケット予測では依然として揉み合いになると見られており、このため資金は引き続きニューエコノミー及びオールドエコノミーの銘柄間を交互に動いて高騰させる可能性が高い。 2014年4月2日
米国はQE期間、終始有利な立場
就任したばかりのイエレンFRB(米連邦準備制度理事会)議長が公聴会に出席し、「米国の労働市場は完全な回復から程遠い」としながらも、改めて緩和策縮小を段階的に実施することを表明した。最近発表された失業率が6.6%に低下したため、FRBが緩和策縮小ペースを加速するのではといった声もあったが、イエレン議長の議会証言はこういった市場の懸念を和らげた。米国の失業率の低下は、実際ほとんどが労働人口の減少によるもので、米国では今なお多くの人々が長期にわたり失業しており、雇用者数の伸びも深刻だ。上述の状況が改善されるまでは、FRBが単純に失業率の低下だけで量的緩和(QE)縮小のペースを加速させる可能性は低いと見られ、政策金利引上げも然りだ。 量的金融緩和政策の実施から現在の撤退の実施に至るまで、一番の勝利者は米国となる。政策実施の初期段階を振り返ってみると、数多くの分析結果でこの金融政策は米国経済の助けとならず、更に長期的で悪性のインフレをもたらすと見ていた。数年経ってみると、米国の労働市場は継続的に改善し、悪質なインフレも起こることなく、米国株は最高値更新を繰り返したことから、FRBによる非常事態への対処法が正しかったことが反映している。欧州や日本の中央銀行も米国と同様に無制限の量的金融緩和を実施しているが、結果を出せるか否かはまだしばらく様子見が続く。 FRBによる量的緩和の縮小開始前には、米国債利回りの上昇懸念から、米国の経済回復が阻害するのはとする懸念の声もあった。米国にとって都合よく、FRBが量的緩和縮小に踏み切るとしたところ、大量の資金が新興国市場から米国へと逆流をはじめ、この流入資金がFRBの債券の購入規模縮小に伴う市場の資金不足を補うだけでなく、同時に国債金利をも低く抑えられていることに成功している。現時点で、米国の国債金利は緩和策縮小の前よりも低水準に推移しており、緩和策撤退が米国の重石になるという予想は明らかに見られない。当然、引き続き量的緩和が縮小され、最終的にどのようにランディングするかは知りようもないが、少なくとも現在のところ、FRBは量的緩和策の縮小というこのゲームで有利な立場に立っていると言えよう。対照的に、都合の悪い新興国市場では資金が流出し、通貨及び資産価格の下落の脅威に直面している。 2014年2月11日
世界の株式市場年間レビュー2013-IFA-Hongkong
新年が明けて2013年の一年間を振り返ってみますと、世界の株式市場は実に大きな構造転換を経験しました。世界経済が緩やかに回復するにつれ、各国の株式市場ではサブプライムローンの金融危機がもたらした損失の補填の度合いに差が出てきました。中でも米国、欧州及び日本などの先進国の株式市場は最も好調となり、反対に新興国市場では資本流出のダメージを受け、不振に陥り再起できない状態です。世界の株式市場の時価総額では、史上最高額となる63.4兆ドルに達し、世界金融危機前の最高額を更新しました。年間上昇率第1位はドバイの株式市場で年間103.88%もの大幅上昇となり、ドバイは石油業から観光業への転向に成功し、大きな経済効果をもたらしました。一方トルコでは汚職問題の懸念から、株式市場が年間18.31%も下落し、最も悪い株式市場となりました。 先進国の株式市場は好調に 量的緩和(QE)による景気刺激を受けて米国の株式市場は躍進を続け、ダウジョーンズ工業平均株価(Dow Jones Industrial Average)や、ナスダック(Nasdaq)及びスタンダード&プアーズ(S&P500)の上昇率はそれぞれ25.75%、37.66%及び29.11%に達し、いずれも史上最高値を更新しました。雇用統計及び不動産市場の安定化が米国経済への信頼を大きく回復させたことを受け、FRB(米連邦準備理事会)が量的緩和の縮小に踏み切っており、今年2014の一年の米国経済は引き続き上昇傾向になると見られます。 欧州各国も次第に欧州信用不安の暗雲から抜け出しつつあります。主要国株式市場のイギリスやドイツ、フランスでは、それぞれ14.46%、25.97%と17.48%の上昇となっています。少し前に財政債務危機に陥ったPIIGS5カ国のポルトガル、イタリア、アイルランド、ギリシャ、スペインの株式市場はいずれも非常に好調となりました。好調な株式市場はさておき、欧州経済が低インフレ問題に直面したことから、ECB(欧州中央銀行)は絶えず景気刺激策の規模を拡大。ひいてはマイナス金利政策も選択肢として検討しているとされ、デフレ回避が現在のECBの主な責務となっています。 日本の株式市場は安倍首相による経済学「アベノミクスAbenomics」が牽引し55.64%もの大幅上昇となり、上昇率世界第4位となりました。大規模な公共事業増加の財政拡張及び金融緩和の景気刺激策を受け、実質消費は下がっているものの日本はようやく長年の新興国との競争によるデフレを抜け出しつつあり、年間17%もの円安化も古い産業である日本の輸出セクターにとって強力な後押しとなるかもしれません。 新興国市場は意気消沈 新興国がもてはやされてきたここ数年間で見られた力強い成長と比べ、2013年の新興国市場は大打撃を受けて世界最低水準に落ち込みました。米国による5年に渡るQE実施は全世界に大規模なバラマキによる流動性をもたらし、新興国の株式市場を押し上げてきましたが、米国経済が安定したことでQE規模が徐々に縮小する見通しが発表されるやいなや、流動性が低下しつつある危機感で、真っ先に新興国市場からリスクオフの資金流出が起こりました。このため東南アジアの株式市場は非常に大きいダメージを受け、タイやインドネシアの株式市場は下降の一途となりました。 中国ではGDP成長率の鈍化及び構造改革の時期に突入し、大量の資金が生産能力過剰な不動産などの業界に流入しました。これを受けて株式市場は長期に渡り資金不足となり、年間下落幅4.74%で世界ワースト5位となりました。株式市場は近い将来、重点的に改革されるため、政策の実施とその効果に伴い、この一年で株式市場はある程度反発する可能性があるでしょう。 中国を除くそのほかのBRICs の3カ国も同様に低迷し、ブラジルは株価が15.14%下落しワースト2位に、ロシアは5.81%下落しワースト4位となりました。 2014年の展望 2014年、世界経済の継続的回復は株式市場はより多くのサプライズをもたらすと見られます。米国の株式市場にとって経済指標の裏づけは不可欠です。QE撤退に成功できるか否かが1つの大きな試練となるでしょう。欧州及び日本は大規模な景気刺激策の恩恵を受け、もし低インフレから脱却できれば、ようやく長期的な安定を得られるはずです。新興国市場の低迷が底打ちとなった後に順調に反発できるか否かについては、先進国市場からの需要で輸出貿易セクターを牽引できるか否かにかかってきます。中国の株式市場ではこれから政策実施が決定されており、大規模な構造改革がプラス成長をもたらす可能性が見込まれます。2014年に世界の株式市場がどのようなパフォーマンスとなるのか、私達香港のIFAのTENGARD(テンガード)は大いに期待を寄せています。
米QE縮小の展望
2日間の協議を経て、米連邦公開市場委員会(Federal Open Market Committee、 FOMC)は12月18日、毎月の債券購入規模を850億ドルから100億ドル縮小し750億ドルとする計画を決定しました。米国は2008年のリーマンショック以降、大規模な量的緩和政策(Quantitative Easing、QE)を行い、米連邦準備理事会(Federal Reserve)は米長期国債(Treasury Bonds)及び住宅ローン担保証券(MBS)を購入することで市場に大量の資金供給を行い、経済回復を支援してきました。そして5年を経た今、QE縮小の決定は、米国による金融刺激策が終息へ向かい始めた事を意味しています。 米国で大規模な量的緩和が進行する中、全世界では資産価値の高騰が続きました。そして今年5月、米FRBがQE縮小の意向を示したところ、たちまち市場は大きなインパクトを受けました。米国債利回りの急上昇を受けて資金は次々と新興国市場から流出し、新興国の株式市場及び通貨を大幅に下落させたのです。この一件でQE縮小が国際市場全体に大きなインパクトをもたらすことが浮き彫りとなりました。その後、市場参加者のQE縮小に対する準備が整ったことで、QE縮小に対する懸念がすっかり無くなったと見なされていた今年9月、FRBはFOMC後に打って変わってQE継続を宣言、再び市場にインパクトをもたらてしまいました。総じて2013年下半期の世界の金融市場は、ひたすら一つのテーマにばかり注目が集まったと言えます。その結果、QE縮小観測はもとより、米経済動向の些細な変動すらも、過大に解釈されてしまった可能性があります。 2013年も間もなく終わろうというこの時期、QE縮小観測は後退しつつありました。しかし、FRBは大方の予想を覆し、QE規模縮小を決定しました。縮小規模が小さいため、流動性に大きな影響が出ることは無いものの、この決定には多くの意味が含まれています。まず一つ目は米国の安定した経済回復です。11月の失業率がここ5年の最低水準となる7%へ低下、GDPも上昇を続けており、不動産市場でも安定回復が見られることから、FRBは2014年の経済回復に更なる自信を見せています。そして次に、QE縮小規模の小ささにFRBの慎重な姿勢が反映されています。決議公表の後、スポークスマンは政策金利を据え置くとした上で、たとえ失業率が目標の6.5%を下回ったとしても、インフレ率が上昇しなければゼロ金利政策を長期化するとし、これもまた市場の投資意欲を後押ししました。そして最後に、5年もの金融刺激策を終えるのは決して容易ではないということです。一度停滞した米国経済はすでにQEへの依存度が高く、加えて過去に前例のない情況であるため、QE縮小によって経済や市場にどのような反応が起こるのかは見当のつけようがありません。FRBのこの重大決定は、知恵や勇気を必要とするだけではなく、米政府がこの先の米国経済を何としても正しい軌道に戻すという断固とした決意を表してしています。 客観的に見て、月100億ドルという規模の縮小が資金の流動性環境を大きく変えることはありません。結局のところ、米国は今後もひっきりなしに紙幣印刷機を稼動させるため、QE縮小開始から半年を経過した頃には、すでにもう市場に過剰反応が起こる要因は無くなっているでしょう。これは成熟市場である所以であり、FRBの望む着地点です。今のところ、ユーロ圏と日本では再び景気刺激措置が始まっており、米国が真っ先にQE縮小に踏み切った事は、その他の地域にとって参考となる経験として蓄積されるはずです。もし問題なく緩和策撤退が成功となれば、世界の金融市場の安定化にとって非常に重要な意味を持ちます。私達が投資を行う上でも、同様に参考となり学べる物がある事でしょう。